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恋と音楽⑩

「たしかに私は鮎沢先輩と江角先輩をズット見ていて、あんな風になりたいと思っていました」

 今川さんの思わぬ告白に田代先輩が、どのくらい前からそう思っていたのか聞くと、中学に入って直ぐだと答えた。

 続いて里沙ちゃんが、あんな風ってどんな風なのか聞くと、親戚の従兄か兄妹みたいな心の芯で繋がっている関係だと答えて私を真っ赤にさせる。

「鮎沢さんを追いかけて来たのね」

 瑞希先輩に言われて今川さんは恥ずかしそうに、うつむいた。

「私たちは両親や友達を見ながら、そのいい所に憧れて、それを知らず知らずのうちに模倣するように育って行く。今川さんたちは鮎沢さんと江角君を、そして鮎沢さんは御両親やお兄さんを見ながら自分に合った恋をなぞる」

 瑞希先輩の話を、恥ずかしがっていた心が嘘のように落ち着いて聞く事が出来た。

「そうか、だから最近お母さんになりたいと思うんだ」

 今度は里沙ちゃんが告白。

「えっ?何それ。お母さんになるって赤ちゃん生むことよ」

 田代先輩が慌てて聞くと里沙ちゃんは頷いて、二年生になって急に赤ちゃんが欲しくなったのは、この曲に感化されたせいなのかなと言い出して、みんなを驚かせた。

 そう言えば二年生になってしばらく経った時、里沙ちゃんも彼氏さんと上手くいかなかった時期があったことを思い出す。

 それについても里沙ちゃんはみんなの前で、あの時千春たちの恋愛観に感化されていて、どうして私たちはモットお互いを信頼し合えないのかと思い険悪になったと告白した。

 私たちの恋愛観かぁ。

 んっ? 私たちの恋愛観って、私と誰? 江角君?

 今迄、話の流れで自然に聞いていたことが急に恥ずかしくなる。

「キャーッ、千春ったら真っ赤よ」

 里沙ちゃんに言われなくても顔が真っ赤になったのは分かった。

「だって、恋なんかしていないのに、私の恋の話ばかりするんだもの」

 そう言って怒ると里沙ちゃんは「じゃあお兄さんの恋」と言って笑った。

 就職してから仕事漬けの兄に恋なんてあるのだろうか、と不思議に思いながらも、その言葉に魅かれている自分がいた。

 パッヘルベルのカノンを聴きながらロンと夜のお散歩。

 ふと立ち止まり聞いてみる

「君は誰を見ながら育っていくの」

 ロンは一瞬私を見上げてから、また草の臭いを嗅ぎ出した。

 犬は飼い主に似る。

 ロンの為にも、しっかりした自分でいたいと思った。


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