恋と音楽⑥
あくる日の練習。
昨日の事もあり宮崎君を避けていた。
練習の合間に里沙ちゃんから、なんか今日少しおかしいよね。と言われ胸の鼓動が大きく鳴って俯くと、里沙ちゃんは宮崎君と今川さんを見ていた。
いつもベッタリな二人なのに、今日は意識的にお互いの顔を見ない様にしている風に、そっぽを向いている。
そう言えば、昨日の帰りも宮崎君だけが私たちのアイス雑談の輪に入っていて今川さんは居なかった。
「ねえ、なんか知っている?」
不意に投げられたその言葉に再び胸が大きく鳴った。
あの時、宮崎君は私に何を言おうとしていたのだろう。
最後まで言われてしまうのが恐ろしかったけれど、気になって仕方がない。
だから今日、宮崎君を避けていた。
「知らないよ」
カラカラの喉を絞るように、そう答えるので精一杯。
里沙ちゃんは、ぎこちない私に気が付いたのか「ふぅ~ん」と言ったきりそのことには触れずに話題を変えてくれた。
練習を終えた帰り道、瑞希先輩たち四人で帰っていると、いつも宮崎君と一緒に帰っていたはずの今川さんも合流してきた。
二日続けて別々に帰る今川さんと宮崎君に、鈍い私でも二人に何かあったと確信する。
「ねぇ。宮崎君と何買ったの?」
里沙ちゃんがストレートに聞くと、今川さんは「何も」とだけ答えるだけで練習中の、ぎこちない態度とは裏腹に今は妙に明るくふるまっている。
「鮎沢先輩って、江角先輩と付き合っているんですか?」
みんながお店に買い物に行き、二人っきりになったとき昨日宮崎君から聞かれた事と同じ質問を今日は今川さんが聞いてきた。
「べ、別に只の同級生だよ」
昨日と同じように、たどたどしく答えると「そうなんですか?私、江角先輩はそう思っていないような気がするんですけど、それに鮎沢先輩も」と昨日の宮崎君と同じことを言って私を驚かせる。
今川さんの、どこか探るような瞳から逃れるように私が返した言葉は昨日と同じ台詞。
昨日と違うのは、買い物に行っていたみんなが丁度戻って来てくれた事だ。





