恋と音楽②
「へぇ~すごい!ねぇ誰誰?その告った男子って」
田代先輩が、その事をなんと私に聞かずに里沙ちゃんに聞いたものだから慌てて里沙ちゃんの口を塞ぎに行ったけど、一歩及ばなかった。
でも里沙ちゃんは、千春が誰かに告白されたことは気が付いたけど、その現場も告った相手も診ていないので想像の域でしかないからと、話を濁してくれた。
言われてみると里沙ちゃんは其とき傍には居なかったから、誰が私になんて単なる推理でしかない。
でも、それがことごとく当てられてしまっているのが悩みの種……。
「ねえ、ねえ!千春。教えなさいよ。今、誰と付き合っているの?」
田代先輩は、里沙ちゃんが知らないと分かると直接私に聞いて来たので困った顔をすると「じゃあ告った男子の名前だけでも……例えば、同じ二年生なら……」
なんか超やばいと思っていたらコバの名前を出され、ホッとして余裕で「違います」と返事をすることができたけど、田代先輩の探求心は止まらなくて
「じゃあ三年生でマッサン!」
「違いまぁ~す」
「じゃあ一年生の宮埼君!」
「違いますし、宮崎君には今川さんがいるじゃないですか」
「でも、なんか宮崎君って何とかして千春に絡みたがってるように思うんだけど……」
「それは、元々中学から吹奏楽部の仲間だから」
不承不承納得した田代先輩は未だ色々と考えている様子だったけれど、もう私たちは違う話題をお喋りしていた。
アイスももう終わりかけになったとき、田代先輩が急に「江角っ!」と、大きな声を出したものだから、動揺してしまって棒の片側に残っていたアイスを落してしまった。
一瞬、どう返事したら良いものかと戸惑っていると、向こうから歩いて来る江角君たちの姿が見え「こっち!こっち!」と田代先輩が手を振っている。
その様子で、田代先輩が江角君の名前を叫んだのは答えを当てたのではなくて、単に向こうから来る江角君の名前を呼んだだけだと分かりホッと肩を撫で下ろしていた。





