恋と音楽①
修学旅行も終わり、吹奏楽部は全国大会地区予選会に向けて厳しい練習を再開した。
朝練、昼練、そして放課後の練習に、土曜日曜の休日練。
まるで売れっ子の芸能人みたいな練習漬けに、勉強のほうが追い付かないので里沙ちゃんも私も通学の電車内で勉強しているありさま。
そんな私たちとは全然違って、余裕の表情で窓の外を見ている江角君。
さすが学年トップクラスの人は違うと感心してはみたものの、この状況下の私たちの傍で平然として居られる訳もなく、分からない所は調べるより江角君に直ぐに聞いてペースに巻き込んでしまう。
こんな状況だけど、朝晩のロンの散歩は欠かさない。
そして、やっと期末テストも何とか乗り越えて、待ちに待った夏休み。
夏季補修に模擬テストがてんこ盛りで名ばかりの夏休みだけど“夏休み”と言う名前が付くだけで心の余裕が違ってくる。
学校の帰り道に、みんなでアイスを食べたりする事も私たちにとっては十分夏休みを楽しんでいる事になるだろう。
その日はみんなでアイスを食べながら恋の話になった。
「ねぇ、瑞希先輩は恋人にするなら年上と年下、どちらが良いですか?」
里沙ちゃんが瑞希先輩に聞く。
「う~ん……優しくしてくれるなら、どっちでもいいけれど年下の男の子から優しくされるほうが愛されている感を高く感じるかな」
「佳奈は?」
瑞希先輩が田代先輩に話を振る。
「私は、年上かな……やっぱ、頼りになりそうだし。里沙は?」
田代先輩が里沙ちゃんに振る。
「私も年上!優しいし頼りがいがって、それに甘えられるし」
隣で棒アイスを舐めながら、あ~里沙ちゃんの彼氏さんが、そんな感じの人なんだと思っていると「千春さんは?」と瑞希先輩から話を振られてしまった。
「えっ!えっ?わ、わたし??」
一連の流れから言うと話を振られるはずなのに、まったく気にしていなくて話を振られた途端に驚いて顔を赤くしてしまった。
「千春さんは男の子からモテそうよね」
何故か瑞希先輩がいつもと違って意地悪っぽく言うと、田代先輩に「何回告られた?!」なんて聞かれて更に顔が熱くなる。
「私が知っている限り、最低でも中学時代に四回と、高校に入って三回ね!」
『もーっ!なんで知っているのよぉ~里沙のバカ!』





