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ロンと、修学旅行⑪
目が覚めて時計を見ると八時を過ぎていた。
どうやら二度寝してしまったらしい。
初めて泊めてもらったお家で寝坊してしまうなんて恥ずかしくて、隣で寝ているロンに「もう!起こしてよね……」と声を掛けようと振り返ると、そこに居たはずのロンが居なかった。
『ロンに何かあったのだろうか?』
不安になって階段を駆け下り、洗面所で洗顔と歯磨きと髪に櫛を軽く通して直ぐに診察室に走った。
まだ開いてないのだろうか待合室には誰も居なくて、処置室の奥から誰かに説明している先生の声が聞こえ、それに頷いている女性の声。
『お母さん……?』
私が恐る恐る処置室を覗き込むと、そこにはやはり先生とお母さんが居て、私に気が付いて振り向いた。
そのとき、私は自分の心が凍り付くほどギョッとした。
なぜなら、そこには診療台に居るはずのロンが居なかったから。
『夢……もしかして、全部夢だったの……』
「千春」
私を呼ぶお母さんの声に被せるように言った。
「ロンは……?」
母さんと先生が俯く。
「そっ、そんな……」





