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ロンと、修学旅行⑨

 頬をくすぐられて目を覚ますと、目の前にはロンの顔。

 いつの間にか寝てしまった私は、不覚にも麻酔の覚めたロンに起こされた。

 カーテン越しに差し込む、霞色に輝く朝日。

 その光を背にしているロンの姿が、この世のものではない気高く尊いものに感じ、導かれるように無意識にその頬に両手を伸ばし見つめていた。

 ジッと私を見ているロンの目が左に逸れたので、私もその方向を向くと目覚まし時計が午前四時を伝えていた。

「ゴメン。心配かけちゃったね」

「……!?」

「まだ間に合うよ」

「えっ!?」

「修学旅行楽しみにしていたんだろう」

「でも……」

「僕はもう大丈夫さ、鶴岡先生がチャンと治してくれたから」

「……」

「僕なんかよりも、もっと友達との時間を大切にしなきゃ」

「……寂しくないの?」

 言葉と一緒に涙が零れた。

 ロンは、いつものように私の胸に首を置こうとしたけれど、直ぐに首を元のように上げて話してくれた。

「正直寂しい。でも千春に必要なのは僕なんかじゃない人間の友達だろ?僕なんかに時間を費やして周りを見れなくなってはいけない」

 急にロンが無理しているように感じ、私は諭すように静かに言う。

「家族でしょ」と。

「家族……でも僕は」

 ロンの言葉を遮るように続けて言った。

「そう、貴方は家族。兄弟でもないし恋人でもない、まして親でもなければ子供でもない。だけど私たち鮎沢家の者たちにとっては、時に兄弟であり、子供であり、そして……そして私にとっては大切な、大切な恋人なの。いくら貴方に言われようとも私はもう決めたの、修学旅行に行かないと。病気の貴方を置いて……偽りの心では友達も自分自身も楽しめない。家族を大切にできない人間が友達を大切にできるとは到底思わないわ」

「困った人だな……」

 言葉とは裏腹にロンはとうとう首を私の胸に置いた。

「だって家族ですもの。ロンが私の事を心配してくれるのと同じくらい、私もロンの事が心配なの。今はロンが病気だから、その想いは屹度何十倍も私のほうが強いのよ」

「分かった……有難う。じゃあ千春に何かあったときは僕頑張るから、そのときは言うことを聞いてね」

「うん」

 私の胸に頭を乗せて気持ちよさそうに目を瞑っているロンの頭を撫でながら聞いてみた。

「私の胸の上、落ち着く?」

「うん、僕が乗ると千春がキュンとして一瞬心臓の鼓動が高くなるのも愛されているって実感できるし、それに意外に柔らかくて大きなこの二つの山に挟まれると、温かくて気持ちいい」

「!!」

 やっぱエロだ!

 私は、ガバッと布団から跳ね起きた。


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