ロンと、修学旅行⑧
手術が終わったのは夜中の十二時過ぎ、何も心配することはないけれど麻酔もまだかかっているのと何かあった時の用心のためロンは一日入院することになり、お父さんとお母さんは手術終了後に家に帰った。
先生の計らいで私はロンの入院に付き添いさせてもらえる事になり、ロンもケージの中ではなくて私と一緒に鶴岡部長の部屋で寝させてもらうことになった。
これは鶴岡部長が北海道に旅立つときに、もしもロンに何かあって入院するような事があったら自分の部屋を鮎沢千春に貸して欲しいと、お父さんである院長先生に言って出て行ったから使えたもので、もう行けなくなってしまった修学旅行だけど、私も江角君と一緒に北海道のどこかにいる鶴岡部長に会って有難うと言いたい気持ちで一杯になる。
月明かりの差し込む部屋で、隣に寝ているロンの顔を覗く。
一緒の布団ではない少し離れているところで寝ているロンに自分の細く頼りない手を伸ばす。
その頬にそっと手を当てると、ロンが確りと生きている暖かさが伝わって来る。
恋人のような、それともお腹を炒めて生んだ我が子のような不思議な愛おしさが込み上げて瞼から涙が滲み出てくる。
麻酔から覚め目を開けたときに、その前に居る事しかできない私だけど、ロンは屹度許してくれる。
何もなかったように。
先生からは、私の不注意ではなく突発性の胃捻転だと言って貰えたけれど、あの時、走って帰らなければ回避できたかも知れない。
ロンは決して人を責めないし、恨まないし、疑わない。
ロンは私の事をずっと好きでいてくれる。
今迄も、そしてこれからも。
その純粋な心の前に、ズット向き合える自分でいたい。
逃げないで受け止められる自分で……。





