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ロンと、修学旅行③

「千春……ち・は・る!」

 名前を呼ばれて気が付くと、目の前で三人が私の顔を覗きこんでいた。

「またロンの事、考えていたでしょう」

 そう里沙ちゃんに言われると、頷くしかない。

「ロンに、なにかあったの?」

 田代先輩が心配そうな顔で私の事を見ている。

「だって、修学旅行だもん!」

 里沙ちゃんが中学の修学旅行の時のエピソードを得意そうにみんなに言うと、田代先輩に噂通りの熱々カップルだと揶揄われた。

 でも、瑞希先輩はマリーを家族として迎え入れているだけあって、「お互いに会えないと分かっている日は、辛いよね」と、私の気持ちを理解してくれたうえで、犬だからと言うのではなく同じ人間の家族でも色んな事で何日か会えなくなる事もあるから、あまりセンチメンタルにならないように優しく言って貰えた。

 瑞希先輩が話しを、膝の上に抱いていたマリーを撫でながら聞いていると、背中越しに茂山さんの顔が飛び出してきて、私のロンへ向ける愛情の一欠けらでも男の子に向けてあげれば好いのになぁと言われ、みんなが同意して笑った。

 茂山さんのお店を出てバスに揺られて家に帰る道すがら、さっきお店で瑞希先輩に言われた事を思い出していた。

 確かに家族だって旅行や出張、転勤に結婚など離れてしまう事もある。

 実際、兄はこの春から海外へ長期の出張に出ていて家にいない。

 兄が嫌いなわけではなく寧ろ好きだ。それでも居ない寂しさを感じるのは出て行く時だけで、あとは特に寂しいとは思わない。

 だって直ぐに帰って来るんだもん。

 でもロンの場合は、そんな風に割り切って考える事が出来ないのは何故だろう……。

 いつまでも紫色がかった窓の外を眺めながら考えていると、いつのまにか冷たい涙が一滴頬を伝って降りて行った。


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