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出発⑧

 里沙ちゃんが何を言っているのか分からなかった。

 つい今まで、ふたりが恋人同士だと言っていたのに、次には分かれるって……。

 里沙ちゃんが言うには、今川さんはA組で宮崎君はG組。

 クラスの位置が校舎の東端と西の端で離れている。

 そして自分のクラスには、それぞれ二十人近い異性が居て、隣のクラスにも又同じ人数の異性が居る。

 今迄、中学時代はズット同じクラスだったから波風を立てられる要素も少なかったけれど、これからはお互い監視の目が届かない場所に居て、不穏な噂も直ぐには確認できない。

 それにお互い他の異性に目が行ってしまうかも知れない。

 と、そんな話をしてきた。

 私は急に、いま目の前にいる里沙ちゃんが、私の知っている里沙ちゃんではなくなっていくような寂しい気持ちになったので、なんとか元の里沙ちゃんに戻ってもらいたくて珍しく反論した。

「じゃあ、二年生でクラスが分かれた私たちも分れてしまうの?」

「いや、私たちは同性だから……」

「里沙とは中学時代にクラスは同じだったけれど、部活は違ったよね。それでも私の一番の友達になってくれたよね。違う?」

「……」

「里沙は、江角君が私の事好きだって言っていたけれど、今回クラスが分かれたから、江角君の気持ちも私から離れるのね」

「そ・それは……」

 バツの悪そうに俯いてしまった里沙ちゃんに、私は何かあったのか優しく聞いた。

「いつもの里沙と違うよ。そんなこと言うのって」

「ゴメン……だよね。わたしどうかしてた……」

 俯く里沙ちゃんは素直に謝り、元の里沙ちゃんに戻った。

「どうしたの?」

 私は落ち着きのない時のロンに、いつもするように里沙ちゃんの頭に手を触れて顔を下げて里沙ちゃんの顔を覗きこんで微笑むように聞いてみた。


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