出発⑥
今日は待ちに待った新入部員の入部受付けが始まる日。
練習中に廊下を覗くと、予想通り沢山の新一年生が列になっていた。
「鮎沢先輩!」
ん!?
なんだか、いま名前を呼ばれたような気がする。
そう思ってキョロキョロしていると
「ここですよ!」
と、目の前の人から声を掛けられ、顔を上げて驚いた。
「宮崎君!それに今川さんも……」
夢のような話、中学校の吹奏楽部で一学年下、去年オープンキャンパスで行った吹奏楽部のコンサートに来てくれた二人が揃ってこの学校に来てくれるなんて。
「ちょっと待ってて」
私は慌てて里沙ちゃんと江角君を呼びに行く。
途中で小林君に、ぶつかりそうになり謝ると、バタバタしている私が珍しいのでどうしたのかと聞かれた。
「中学時代の後輩が入部するの!」
私が得意げにそう言うと、小林君は「よかったね!」と笑ってくれた。
そのあとは里沙ちゃんと江角君を交えた五人で楽しく話をして、里沙ちゃんは宮崎君と今川さんから、とてもサックスを始めて一年しか経っていないなんて思えない。と、前のオープンキャンパスの時の感想を言ってもらっていた。
里沙ちゃんは得意げに「まだまだ進化するのよぉ~」に胸を張っていた。
里沙ちゃんが胸を逸らすと、どうしても大きな胸が更に誇張される気がして、女の私でもつい目が行ってしまう。
しかし男の子には目の毒なのだろう、目の前でそれを見せられた宮崎君は直ぐに目を逸らしていた。
「兎に角、これから二年間宜しく!」
雰囲気を察したのか江角君が元部長らしく話を締めくくり練習に戻って行く。
私も練習に戻らなくちゃ!
なんだか新入部員たちにウキウキして、どっちが新入部員だか分からないなと我ながら思った。





