出発④
お正月が過ぎると、あっと言う間に冬休みも終わり学校が始まる。
三年生はいよいよ本格的に受験に入り、学校でその姿を見る事も少なくなってしまい、その分今迄より静かな校内の不意意気は、広い学校に大きな穴が開いたようで寂しい。
三年生の居ない中、私たちは毎日卒業式用の楽曲を練習している。
二月に入ると風が強く吹く日が多く、雪が降る日もあって本当に寒さが堪える。
それでもロンはどんなに風が強くても、どんなに寒くても平気で、寧ろ雪の日には珍しいのか大喜び。
寒さに負けて外に出るのが面倒になったり、着込み過ぎて肩が凝ったりする自分が情けなく思う。
その二月も中旬を過ぎ、春の暖かな日差しを感じる日も増えて来た頃、三年生の進路も決まり始めた。
足立先輩や南副部長など多くの先輩たちが関東にある大学に進む中、鶴岡部長は北海道の大学に進むことが分かった。
先輩たちの大学受験や私たちの学年末試験で二月も瞬く間に過ぎて三月の卒業式も……。
そして、もう春休み。
あの厳しかった寒さ、強かった風は何処へ行ったのだろうと思えるほどポカポカと温かい日差しにポーっとする。
空は霞のかかった空色。
深い山からの冷たい水を運ぶ川のせせらぎが冷たい風を乗せて来る。
芽吹いたばかりの草の臭い。
久し振りに河原にやって来た。
今日は木管大戦争のときに一緒に練習したメンバーに、そのときの対戦相手である足立先輩たち、それに鶴岡部長、南副部長、江角君に何故か伊藤君に茂山さんが集まって青空の下で演奏会。
もちろんロンもマリーもラッキーも出席している。
こういう時にいつも思う。
やっぱり外は良いと。
ヨーロッパのオペラ会場のように豪華絢爛な施設や、最新の音響設備を取り入れたホールも素晴らしいけれど、私にとって何よりも大切なロンに聞いてもらえるこの空間が私は好きだ。
そう思いながら演奏中、何度も茂山さんの傍で私の演奏を見つめてくれるロンを見ていた。





