出発③
周りを見ていると家族連れも多いけれどカップルも多い。
中学、高校生から大学、社会人まで様々なカップルが目についた。
私の直ぐ周りを見ても瑞希先輩の横を歩く伊藤君や、南副部長の隣ではしゃいでいるマッサン、里沙ちゃんの隣をお父さんみたいに歩く茂山さんとかも、よその人から見ればカップルに見えたりするのかな……。
周りをキョロキョロしていると何故かさっきからズーっと私の後ろに江角君と小林君、それに鶴岡部長が黙ってついている。
屹度、私が迷子にならないように見張っているのに違いない。
そんなに心配してくれなくても、ちゃんと里沙ちゃんと手を繋いでいるから大丈夫なのにねっ。
おしくらまんじゅう状態の中、漸く拝殿について拝む。
それから、おみくじを買って皆で見せあった。
私は“吉”で、待ち人は“今はなし、時が来れば実る”でガックリしていたのに里沙ちゃんは“大吉”で“実を結ぶでしょう”と出ていて大喜びしていた。
江角君は“小吉”で、待ち人は“当分振り向かず”でガックリしていて。
伊藤君は“中吉”で“遅くに成就する”と書いてあり江角君に勝ち誇った顔を見せていた。
可哀そうだったのは鶴岡部長と小林君で、二人とも“大凶”で“待ち人敵わず”だった。
おみくじ運の悪かった鶴岡部長と小林君は境内におみくじを結び付けていて、私も迷った挙句結びに行くと、江角君も結びに来ていた。
参拝を終えて、野毛山動物園に行ってからコスモワールドで遊んだ。
途中でジェットコースターを乗り終えて休憩しているとき足立先輩が私に“凄く楽しいけれど寂しい気もする”と言って来て、私もロンが居ないときはいつも同じように思いますと答えた。
人間だったら好きな人と思いっきり遊べるけれど、動物の場合は一緒に同じ所へ行くのも難しい事も多いし、たとえ行けたとしてもこの遊園地などは怖がるだけで面白くはないだろうな……。
そう考えながら足立先輩と二人、家に残してきたラッキーやロンの事を思い出していると、瑞希先輩から“どうしようもない事なんだから今は思いっきり忘れて遊ばなくちゃ!”と言われ、意外にドライな瑞希先輩に驚いた。(足立先輩は意外にシックなのにね……)
いっぱい遊んで家についたころは、もうクタクタ。
玄関に入った途端バタンキュー。
すると、いつものようにお出迎えしてくれたロンが私の胸の上に乗って優しく顔を舐めてくれる。
外は寒かったので家の温もりと、ロンの体温の暖かさに癒され少し元気が復活してきた。
玄関からスクッと立ち上がった私は、居間で寛いでいたお母さんにもうみんなお風呂が済んだのか確認してから、ロンと一緒にお風呂に入る事を言って二人でお風呂に入った。
寒い夜なので、お風呂上りには暖かい部屋で大きなドライヤーを使って念入りに乾かして丁寧にブラッシングして一緒にベッドに包まった。
「いつまでも健康でいてね。そして今年も宜しくお願いします」
そう言ってロンの鼻を突くと、ロンは舌をペロリと出して私の頬を舐めた。





