前へ㉙
足立先輩が部活に復帰して二週間後、吹奏楽コンクールのメンバーが発表された。
七十五人居る部員のうち全国大会のメンバーになれるのは五十五人。
確率的にはメンバーに入れるほうが高いけれど、一年生に限って言えばその確率は半分を下回る。
先ず楽器ごとの第一担当者が発表された。
これはそのまま自由課題曲“ボレロ”での独奏メンバーになる。
曲の出だしを奏でる第一フルートには瑞希先輩が二年生ながら選ばれた。
そのあとのクラリネットは山下先輩で次のファゴットは鈴木先輩。
マッサンの小クラリネットの次のオーボエには足立先輩が選ばれた。
一年生では江角君が第一トロンボーンの大役に選ばれたけれど、私は最後の五十五番目に名前を呼ばれてメンバー入りしたものの、小林君と里沙ちゃんは落選してしまった。
メンバーギリギリで滑りこんだ私だけど、鶴岡先輩が卒業するときに教えてくれた話によると、名簿順だともっと前に名前を書いていたのだけれど、あまりにも真剣でハラハラしている私の様子が可笑しくてワザと順番を飛ばして最後に持ってきたのだと笑っていた。
そのときに瑞希先輩が一旦部活を辞めた理由も、瑞希先輩の代わりに私が一旦辞めたことも、山下先輩が頑なに三年生の地位を守ろうとしたことも、そして鶴岡部長が一切関与しなかった理由も、全て足立先輩とミッキーの別れに関与していたことを知った。
鶴岡部長はそのときロンの事をしきりに褒めてくれたけれど、ちっとも私を褒めてくれなくて脹れていると「お前たちペアが羨ましいよ」と髪をクチャクチャにされたのを今でも思い出せる。
全国吹奏楽コンクールは、市大会、県大会、東関東大会と順調に進んだけれど全国大会では銀賞で目標としていた全国大会制覇は成し遂げることが出来なかった。
全国大会が終わり時間に余裕が出来たある日、ロンと一緒に長い散歩に出かけたとき、ロンが寄り道をしたいと引っ張るので久しぶりに足立先輩の家の前を通ると、ミッキーの犬小屋に繋がれている犬が私たちに気が付いて二回吠えた。
『ブリタニー・スパニエル?それにしては少し小さい気がする……』
そう思って見ているうちに、慌てて庭に出て来た足立先輩が私たちに庭に入るように促す。
庭に入ると、さっきの犬はもう足立先輩の膝に抱かれて甘えていて、ロンとも直ぐに仲良くしてくれた。
「また、犬を飼い始めたのよ。名前はラッキー」
ミッキーと一文字違いですねと笑っていると、足立先輩は悪戯っぽい目を見せて
「ミッキーの“ミ”ラッキーの“ラ”そしてそこに愛が入ると何になるか分かる?」
足立先輩は、全然思い浮かばなかった私にすぐ答えを出してくれた。
「ミ+ラ+i=ミライ(未来)」
「未来かぁ!」





