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千春の初恋③

 午前中最後の競技は騎馬戦!

 私は上のポジションなので見晴らしが良い。

 やっぱり、あの声は花火の夜に合った兄の彼女さんだ。

 しかも今日は当たり前だけど浴衣じゃなくてTシャツにロンの大好きなハーフパンツ。

 ロンはその大好きな生足の間から顔を出して彼女さんを見上げていた。

「この浮気者!」

 叱りつけてやりたいところだけど既に競技は始まっていて、私は怒りの矛先を相手の帽子に向ける。

 1つ、2つ、3つ。

 怒りパワー絶大なり!

 騎馬の向きを変えたとき、丁度ロンと彼女さんの目の前を通った。

 相変わらずロンは彼女さんを見上げていて、彼女さんが私のほうを指さしてロンに顔を向けたときロンの長い舌が彼女さんの唇を捕らえていた。

 「キャッ」と微かに彼女さんの嬉しいのか嫌なのか、どっちともつかない悲鳴が聞こえた気がした。

 嫌なら嫌だとキチンと断れ!ボケ兄貴、監督不行き届きで彼女さんロンに取られちゃうぞ!

 二人を気にしている間に、急に頭が涼しくなった。

「あっ!しまった!!」

 見上げると私の帽子を掴み上げた手が、青い空に高々と伸びていた。

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