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「ありがとう。私たちの話を聞いてくれ、それに涙までながしてくれて」

 冷たい手に持たれた空色のハンカチが私の涙を拭ってくれた。

 涙を拭いてもらい再び見る足立先輩の顔は、さっきまでの悲しみに澄んだ顔ではなく、曇った悪戯っぽい笑顔に変わっていて驚いた。

「嘘よ」

「えっ!?」

「私ね、最近音楽より小説のほうに興味があって、今の作り話なの。面白かった?」

「で、でも、写真……それに、犬小屋……」

「ああ、この写真の犬は親戚の犬で、まだ元気よ。癌なんて無縁みたいに元気で健康そのもの。庭の犬小屋は、その子が泊まりに来た時のものよ」

 騙された……。

 いや、気を許した私が馬鹿だった。

 足立先輩の私への敵対心みたいなものは、私が思っているよりも奥が深いのだ。

 しかしそう思う反面、どこか違う気もしているとも思った。

 そのとき、ロンが急にゼミダブルのベッドに掛かってあるシーツの間に潜り込もうと暴れ出した。

 いつもは勝手に変なことをしないのに、よりによって上げてもらった先輩の部屋でこんな事!

 慌ててロンを捕まえようとしたけれど、ロンはシーツの内側に居て上手く掴めない。

「なによ!この犬。馬鹿じゃないの!早く止めさせなさい!」

 足立先輩が怒っている。

 もうこうなったら、シーツごとロンを捕まえるしかない。

「えいっ!」

 シーツごと捕まえむき出しになったベッド。

 綺麗なはずのベッドには白いシーツで覆い隠された赤茶色のシミの跡があった。


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