前へ⑰
「悪いけど、ロンのこと試させてもらったの」
『試した?ロンを……何で?』
「じゃあ、竹輪もミルクも……?」
「そうよ」
「何で、ですか?!なんで、私ではなくてロンを試したのですか?」
自分の事なら我慢もするけれど、ロンの事ならハッキリ納得のいく説明が欲しかった。
「ごめんなさいね」
意外に素直に謝った足立先輩は、その理由も正直に話してくれた。
それによると、本当に試されたのは私。
先ず私と言う人間を試すと言っても、高校生ともなると自分を取り繕って見せる術を身に着けているだろうから、短時間でどんな人物なのかなんて分からない。
そこで目を付けられたのが“ロン”犬は正直で、それは飼い主の躾や性格を反映している。
犬は自分の性格を隠さない。
犬の躾がキチンとできていない飼い主には、表から見えない裏があると言うのが足立先輩の持論らしい。
ロンの毛艶が良い事、臭いがしない事、足の爪が伸びていない事から、世話が行き届いているのは分かった。
散歩中にも無理に引いたり、吠えたりしない事で、飼い主に従順な事も分かった。
そして今日、竹輪やミルクなどの欲望にもキチンと飼い主の指示に従える事と、不安な事も飼い主を信じて我慢できる事を確認したと言ってくれた。
「百点満点よ!」
ロンが褒められたことが嬉しくて頭を撫でてやると、ロンも分かったのか大喜びしてくれたが、足立先輩の次の一言でまた心が凍り付いた。
「さて、一般的に良い人だとは分かったけれど、じゃあ私を蹴落とした鮎沢さんに、この前の勝因を聞かせて欲しいの、貴女の何が良くて私の何がいけなかったのか」





