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 足立先輩の言葉に凍り付いた私を、ロンが寄り添って温めてくれる。

 だから、泣かずに済んでいる。

 だから、逃げ出さずに此処にいる。

「触ってみてもいい?」

 今度はロンを見ながら話し掛けられた。

「噛まない?」

 ふざけて甘噛みはすることもあるけれど、本気で噛んだことはないから『噛みません』と言い切っても良いのかも知れない。

 でも他所の犬、特に犬を飼っていない人にとっては、甘噛みも噛んだ内だし、歯を見せただけで噛んだ、もしくは噛もうとしたと捕らえられかねないので『噛まない』とは言ったことがない。

 だから今回も、いつも尋ねられた時に相手に伝えている事を足立先輩にも同じように伝えた。

「噛まないようには躾けていますが、気に障ると噛むかも知れませんから、優しく注意して撫でてあげて下さい」

「そうっ」

 分かったのか分かっていないのか足立先輩は曖昧な返事をすると、恐々犬を撫でようとする人が良くやるように、広げた手をロンの頭の上やや後ろで止めて躊躇っている。

 広げた手は『待て』の合図に使うし、叩かれたことのある犬にとっては『体罰の印』

 どちらを意識するのか知らないけれど、たいていの犬は自分の上に置かれた人間の手を警戒して上を向く。

 ロンには撫でてもらえる時に、相手を怖がらせないように我慢することを覚えさせているので、足立先輩の手は見上げずに真直ぐ前を向いておとなしくしている。

 やがて足立先輩の手がロンの頭に着地してナデナデを始めた。

「意外に、おとなしいのね。しかも賢いし、躾も世話も行き届いていて、合格よ!」

『合格?』

 見上げた足立先輩の顔が笑っていて、もう一度「合格よ!」と言い、ロンの頭をクシャクシャに撫でた。


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