前へ⑨
「なにマッタリしてんのよ!おばちゃんの井戸端会議じゃないんだからね!こんな所で私を立たせておいて」
「すみません」
「用があるのなら、サッサと言って!ないなら直ぐ帰って!」
矢継ぎ早にそう言われて、用がないわけではない。
山下先輩から足立先輩の様子を見て来るように言われたので、ここを通ったのだ。
でも、今の足立先輩の剣幕では山下先輩に何て言えば良いのだろう……。
『家の前でウロウロしていたら怒られました』
『足立先輩はイライラしていました』
わざわざ屋上まで来て、そんな幼稚な報告が聞きたいわけでもないだろう。
そう考えていたら「もう!うっとうしいわね!」と、また足立先輩に怒られた。
「すみません」
短い間に二回もスミマセンと謝り、情けなくなってきていると、足立先輩から「それじゃあまるで私があんたの事をイジメているみたいじゃない人聞きの悪い事ばかり言わないで頂戴!」と、怒られてまた「すみません」と謝る。
「もーっ!しょうがない人ね!いいから入って!」
『入って?』
いや、屹度『帰って』の聞き間違えだろうと思って、私は180度Uターンしたのにロンは逆方向に歩を進め、引っ張られて仰け反った。
「バカか、お前は……」
背中越しに聞こえた足立先輩の声は、言葉とは裏腹に笑っているように聞こえた。





