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前へ⑤

 昨日の反省会で木管グループのA・B・Cの組分け制度が廃止され、全員が協力し合って練習することになった。

 これは木管グループのリーダーである山下先輩が自発的に言い出したことで、それについては会に出ていた全員が賛成した。

 里沙ちゃんは、山下先輩の紳士的な態度に何か下心があるのではないかと疑っているみたいだけど、私はそのまま素直に受け止めたいと思う。

 それよりも気になるのは、足立先輩の事。

 昨日、反省会の途中で退席したまま、今日も部活に来ていない。

 病気か何かで学校を休んだのかも知れないし、学校には来たけれど用事があって家に帰ったのかも知れない。

 そして、昨日ことが尾を引いて故意に部活に出ないのかも知れない。

 いずれにしても私には分からない。

 誰か足立先輩と同じ三年生に聞けば、休んでいるのか用事で帰ったかは分かるだろうけど、足立先輩の心の奥まで覗くことはできない。

「気になるの……」

 練習中、不意に瑞希先輩に話し掛けられた。

「あっ、いえ、ハイ……」

 咄嗟に訳の分からない返事をしてしまい、それを聞いた瑞希先輩は少しだけ微笑んで私の手を引く。

 私は引かれるままに席を立ち、そのまま瑞希先輩の後を付いて行く。

「山下先輩、お願いします!」

 瑞希先輩は、そう言うと部室から出て屋上へ続く階段を登る。

「瑞希先輩!屋上って立ち入り禁止です……」

 屋上からの飛び降り自殺を防止するために決められたルール。

 でも、言葉だけのルールでドアの内側に掛かってある鍵は普通の手で回す鍵なので、誰でも簡単にドアを開けて外に出られる。

 もうルール自体忘れられているのか、たまに屋上に上がっている生徒もいるし、美術部や写真部の生徒は先生に許可をもらって上がっている。

 私たちが屋上に上がったときも、美術部の生徒が数人スケッチをしていた。

「何ですか?!」

 訳も教えてもらえずに連れて来られたことに、やっと抗議すると瑞希先輩はニッコリ笑って答えた。

「千春の悩み事に応えるため。それと山下先輩の悩みを聞いてあげるため」

 ん!?最初の私の悩みは分かるけれど、山下先輩の悩みって一体……。

 ポカンとした顔で瑞希先輩を見つめていると、その後ろに見える屋上のドアが開いた。


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