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前へ④

 翌朝目が覚めたとき、隣にはロンが居てくれていてホッとした。

 でも……いつの日か必ずロンが居ない朝を迎える日が来ると思うと寂しくなって、まだ寝ているロンの顔を見ていた。

 私に見られている事に気が付いたのかロンは直ぐに目を開けて、私の目を見つめ返す。

『朝のベッドで見つめ合う二人って、まるで恋人同士みたい』

 と思っていたら、ロンは大きな口を開けて、あくびをすると直ぐにベッドから降りて階下に水を飲みに行った。

 その様子をなんだか物足らない気持ちでボーっと眺めていた私も、ロンが水を飲んでいる音を合図に、ベッドから降りて着替えて散歩の支度をするために階段を降りる。

 階段を降りる足音を聞いたロンが、廊下に降りて洗面所へ向かう私をまだ心配そうな瞳で見ていた。

 私はロンと目を合わせ

「おっはよう!今日も楽しい散歩にしようね!」

 って、思いっきり元気のいい笑顔で話し掛けると、ロンも「ワン!」と元気のいい返事を返してくれた。

 五月のキラキラと輝く朝の中を今日もロンと一緒。

 ロンが楽しそうに走ると、私も楽しくなってくる。

 ロンが草むらの中に鼻先を突っ込むと、私も覗き込む。

 ロンが何かに気が付いて、その興味を惹かれたほうを見ると、私も同じように見る。

 そしてロンが走ると私も走り、ロンが立ち止まると私も止まる。

 三十分程の散歩の中で体も心も温かくなって行くのが分かる。

 だから、その日に駅で里沙ちゃんと江角君に会ったとき二人は驚いて、こう言った。

「てっきり落ち込んでいるかと思っていたから、元気そうでホッとした」と。

 そう、昨日の反省会の事で、あまり浮世の汚い世界を知らない私が落ち込んでいると思って心配してくれていたのだ。

 私だってロンが居なければ、こんなに元気な朝は迎えられなかっただろう。

 でも、この朝は違う。

 ロンに癒され、そして私の事を気にかけてくれる友達が目の前にいるから。

 私は里沙ちゃんの手を取って電車に乗った。

 思わず江角君の手も取りそうになり、慌てて手を引っ込めたのを江角君に見られたかどうかは知らないけれど、手を引っ込めたあとに恥ずかしくて赤い顔をしてしまった顔だけは確実に見られた。

 電車の中で里沙ちゃんとお喋りしているときに、ふとドアの窓から外を見ている江角君の後姿に目が留まると、なんだかその後姿が楽しそうに見えた。


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