木管大戦争㉙
決定戦用に用意した曲はアナと雪の女王「Let It Go」
これは決定戦に勝つためよりも、むしろ決定戦まで駒を進めさせてもらった感謝の意味を込め、楽しんでもらうために練習してきた。
曲の最初の部分は瑞希先輩のフルート独奏で始め、静かな出だしから徐々に盛り上げていく編曲にし、この編曲の作業は皆で構成について議論し合い発表会の三日前に漸く出来上がったもので、上手く演奏できるか緊張しながら演奏を続けたけど、途中からはそれが上手く行っていると実感できたころから楽しく演奏出来てきた。
そして、その楽しくなってきた所が盛り上がりのシーンと重なり曲が終わったときには私たちも充実感で心が一杯になり、更に観客の今までにない拍手と喝采に心を打たれた。
お辞儀をして舞台から退出し、生徒会役員が終わりの挨拶をするために舞台に上がろうとしたとき、会場からアンコールの声と手拍子が湧きあがる。
生徒会役員さんは挨拶できないほどの大きなアンコールの要請に困ってしまい一旦舞台から退き私たちにアンコールを依頼してきた。
依頼された私たちも、そんなことは想定もしていなかったので、アンコール用の曲も楽譜すら用意していなくて困っていると、江角君が一枚の楽譜を瑞希先輩に渡すのが見えた。
瑞希先輩はその用紙をマッサンと小林君に見せて少し説明し
「行くわよ!」
と私と里沙ちゃんに告げ歩き出そうとする。
「何を演奏するんですか?」
慌てて里沙ちゃんが聞くと瑞希先輩はニッコリ笑顔を見せて
「風笛」
と答える。
風笛なら私と里沙ちゃんと瑞希先輩と三人で何度も演奏したし、マッサンと小林君にも何度も聞かせた。
何故、この楽譜を江角君が持っていたのか知らないけれど、その気遣いに感謝しながら舞台に向かった。





