木管大戦争㉗
私が感情に浸っている間も発表は続く。
「個人戦五回戦、勝者……紅組、百瀬さん」
発表と同時に津波が押し寄せてくるような大きな拍手が沸き起こる。
私たちは。皆で輪になりお互いの手をつないで健闘を称え合った。
これで個人戦は三勝二敗と勝ち越す事ができたので、次の団体戦が負けていたとしても優勝決定戦の曲を皆で演奏する事ができる。
なんとなく勝ち負けよりも、皆で練習した曲をこの場で最後まで演奏したい。
やり遂げたい。
そんな思いに包まれていた。
「それでは、団体戦の木管五重奏の採点結果を発表します」
ここで私たちの名前が呼ばれれば、私たちの勝ち。
呼ばれなければ優勝決定戦。
どうせ演奏するなら、優勝を決めた感動をリズムに乗せて集まってくれた人たちや支えてくれた仲間に伝えたいと、ちょっと欲が出て発表を待つ。
瑞希先輩もマッサンも小林君も、そして里沙ちゃんも真剣な顔で発表を待っていた。
そして司会者が、ひときわ大きな声を出して結果を伝えた。
「勝者、紅組!」
“割れんばかりの拍手”って言うのは、このことかと感じるほど会場の人たちが凄い拍手を送ってくれた。
会場で拍手してくれている人たち、一人一人の顔がキチンと見えてくる。
その中にはやはり宮崎君も今川さんも居た。
私たちを応援してくれて、拍手してくれたり、スタンディングオベーションをして励ましてくれたり、そして今ここで、この結果に喜んでくれる人たちに感謝したいと思った。
嬉しかった。
そして伝えたい。
私たちは、貴方たちに楽しんでもらうためにここまで頑張ってきたこと。
鶴岡部長と南副部長から花束が贈られると言うサプライズもあり、私は感動してしまいまた泣いてしまい里沙ちゃんに抱きかかえてもらって漸く立っていられたほどだった。
拍手も鳴りやまないうちに、椅子と譜面台が会場にセットされ最後の曲の準備が始まった。





