木管大戦争㉓
休憩が開けようとしたときに、瑞希先輩が幕が上がった時に観客が減っていたとしたら、それはどちらが勝っても勝にはならないと言うものだから私たちの顔は強張った。
そんな私たちの表情を和ませるように、マネージャーのように私たちの世話をしてくれている田代先輩が「大丈夫よ!」と大きなジェスチャーでOKのサインを出す。
再び幕が上がったとき、会場に観覧者がそのまま残っていてくれたことに驚いた。
長い時間なので、小休止を挟んだタイミングで人が移動して減ってしまうと思っていた。
残ってくれているということは、紅白どちらかの演奏を少しでも楽しみにしてくれているということだろう。
私たちは演奏を始める前に、各々の顔を見合わせ、折角残ってくれている人たちに楽しんでもらおうと目で確認し合い演奏を始めた。
練習の時から兎に角楽器の入れ替わりをスムーズに且つ楽しく行うように気を付けて、聞いている人たちに楽しんでもらえるようなライヒャに仕上げようと心がけ、アクションも大きくとる。
聞く人に楽しんでもらうことを考えながら演奏していたはずの私たちは、お互いの音や、そして目をみていて自分たちが一番楽しんでいるのではないだろうかと思いながら、体の芯から暖かくなっていくような喜びを感じながら演奏していた。
演奏を終えたとき、少しオーバーな人たち数人がスタンディングオベーションをしてくれたことが嬉しかった。
マッサンと小林君と里沙ちゃんの三人は、スタンディンオベーションをしてくれた観客にガッツポーズで応えて、また新たな拍手が沸き上がった。
演奏を終え、田代先輩に迎えられて舞台の袖に隠れたとき皆でハイタッチを交わして私たち女子四人は抱き合い検討を称え合った。





