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木管大戦争⑰

 上手いなんて自覚は全然なかったけれど、そう言われては頑張るしかない。

 まして同じオーボエ担当の田代先輩に、そこまで言わせてしまっては、なおさらだ。

 でも……頑張る気持ちよりも、このメンバーで練習していると楽しい気持ちのほうがどうしても勝ってしまう。

 担当のオーボエを持ってこなかった田代先輩だけど、バックの中から電子楽器を取り出して一緒に参加してくれているのも、とても嬉しく感じてしまいウキウキしながら演奏する。

 観客は茂山さんとロンとマリーだけだけど、時折散歩や自転車の人たちが歩を止めて聞いてくれ、曲が終わると拍手してくれたりするのも励みになる。

 楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまい直ぐに空が夕焼け色に染まってしまうのが悲しいけれど今日も良い練習ができた。

 月曜日の放課後、里沙ちゃんと江角君に付き添ってもらい職員室に行き吹奏楽部顧問の門倉先生に入部届と提出すると、退部届も貰っていないのに入部届は受理できん。と言われて驚いた。

鶴岡部長は私の退部届を預かってくれただけだったのだ。

嬉しく思う反面、久しぶりに部活に顔を出すのはやはり恥ずかしい。

そう思って、職員室から出ると小林君と増岡先輩が廊下で待っていてくれていた。

そして職員室から音楽教室に向かう廊下には瑞希先輩と田代先輩が待っていてくれて、七人揃って音楽教室の前まで来ると、音楽教室の前には南副部長が廊下に立っていて「おかえり!」と言ってもらい嬉しくて緊張が緩んだけれど、広い教室に入るなり山下先輩達のグルーブから鋭くて冷たい目で睨まれて冷や汗が出た。

戻って来たことと、退部届を保留にしてもらっていたお礼を言おうと思い、打楽器のメンバーと話をしている鶴岡部長のほうに近づこうとしたときに南副部長に腕を掴まれて制止された。

振り向くと、南副部長は笑顔を見せて

「本当は鶴岡君も鮎沢さんが戻って来てくれたこと喜んでいて、そういう報告を聞きたくてしょうがないのだけど、今は立場上中立を保たなければいけないから察してあげて」

 と、私だけに聞こえるように小声で言う。

「喜んで?」

 打楽器のメンバーと真剣に話をしている鶴岡部長の横顔を見つめたまま、小さく呟くと

「男って、面倒くせーな!」

 と、田代先輩に肩を叩かれた。

 それから私たちはB、Cグループに分かれて練習して、そのあと“戦争”の打ち合わせをした。


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