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木管大戦争⑬

練習を始はじめて、最初に演奏した曲は校歌だった。

そしてその曲の練習中、直ぐに違和感を覚えたのは、里沙ちゃんが“戦争”と言っていたので、勝つためのメンバー集めだと思っていたのに、クラリネットの増岡先輩もファゴットの小林君も余り上手ではなかったということ。

 私がそんなことを勝手に思うのは失礼だと思ったけれど、期待していただけに余計感じてしまう。

三年生の山下先輩たちがどのような腕前なのか知らないけれど、コンクールの入賞経験者相手に勝てるような感じはしない。

二人を選んだ真意が分からず、演奏しながら瑞希先輩の顔を覗いてみると、戸惑っている私に微笑むような眼差しを投げていた。

校歌で肩慣らしを終えて、問題のライヒャの木管五重奏曲ホ短調op,88-1 1stの演奏を始めると私の感じていたものは別の形となる。

演奏を始めて直ぐに感じたのは、即席メンバーなのに凄い一体感だ。

この曲はフルートとオーボエのデュオとクラリネットとファゴットのデュオが多く入る。

そして演奏は、その楽器のペアごとの掛け合いが何回も行われるのだけど、増岡先輩と小林君の演奏は息がぴったり合っているばかりか音も歯切れが良くて快適で、何よりもこの二人のデュオは見ていてウキウキしてくる楽しさを醸し出している。

見ていて楽しいものだから私たちのデュオの時も瑞希先輩と微笑みの目を交わしながら演奏していて、いつもの演奏よりはるかに楽しい。

サックスの里沙ちゃんは、あまりこの男子二人に絡むことは無くて淡々と、というか一所懸命頑張っているせいか真剣そのもので、私たち四人との温度差があり、それはそれでベース担当という立場を余計引き立たせているように見えて面白い。

曲が終わったときも私たち四人が爽やかに微笑み合っていたのに対して、里沙ちゃんだけは汗でびっしょりになっていて可笑しかった。

「もー!みんなばかり楽しそうにして!」

「えっ!?里沙は楽しくなかったの?」

 里沙ちゃんの問いに、瑞希先輩が問い返すと里沙ちゃんはニッコリ笑って「楽し過ぎて演奏に夢中になった」と答えていた。

 私の中の違和感はスッカリ消えて、今はそんなことを思ってしまったことを恥ずかしくさえ感じていた。


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