木管大戦争⑧
「戦争ね!」
「戦争??」
部屋に戻るなり、里沙ちゃんが言っていた言葉に反応して聞き返した。
「いいえ、戦争ではなくて競技会形式の発表会よ」
「勝負を決めて、そのあとどうするの?」
瑞希先輩の答えに、江角君が聞き返す。
「決まっているでしょ!向こうが勝ったら、あいつらは私たちを除け者にするのに決まっているから、こっちも同じことをするのよ!」
思ったことを素直に言葉に出せる里沙ちゃんの、こういったところが可愛いけどチョット言っていることはヤンチャだなと思いながらソファーには座らずに床に伏せているロンの横に腰を降ろす。
ロンは直ぐ膝に頭を乗せに来て、私はロンを撫でながら話を聞いていた。
「ところで瑞希さんは、発表会に勝った後どうするつもり?」
江角君の投げかけた問いに、三人とも一斉に瑞希先輩の顔を見ると、少しだけ間をおいたあと
「もちろん辞めてもらうわ」
とキッパリ答えた。
一瞬の間をおいて里沙ちゃんが
「ほら。やっぱり戦争じゃない」
と誇らしげに笑ったけれど、その声も笑いにも無理をしているのが分かる。
私だって瑞希先輩からそんな答えが返って来るとは夢にも思わなかったし、自分の投げかけた問いに答えを返された江角君なんて固まるように呆然としている。
この狭い今の空間で余裕の表情なのは瑞希先輩と、そしてもうひとりだけ。
その、もうひとりは私の膝の上で楽しそうな顔をして瑞希先輩を見つけていた。





