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木管大戦争④

暫く春の暖かくて穏やかな日が続き、私はロンと一緒に河原で練習を終えたあとシロツメ草で冠やロンの首飾りを作ったりして遊んで帰ったり、クマ蜂たちの留守の間に藤棚に入って思いっきり藤の香りを吸い込んだりして遊んだ。

その日はマリー用に作った首飾りが上手にできたので傷まないようにゆっくりと家に戻ると、玄関の前に見覚えのある自転車が置かれていた。

里沙ちゃん?

玄関を開けると、やはりそこにはニコニコ顔の里沙ちゃんが座って待っていた。

「里沙!?どうしたの?」

「遊びに来た」

 遊びに来たと言っても、普通なら丁度部活を終えて下校する時間帯。体調でも悪くて早退したのか不安になって聞くと、瑞希先輩たちと近くの老人ホームへ慰問コンサートをしてきた帰りだと言う。

「最初は千春の一件もあって瑞希先輩の事嫌いになったけど、最近は一緒に練習するのが楽しいって言うか、一緒にいるだけでドンドン自分が上達しているような気がするよ」

 そう言うなり、背中に隠してあったお湯の入ったバケツを出して「さあ!ロン綺麗になろっか!」と声を掛けた。

 ロンは目をキラキラさせて大喜び。

 若い女性ふたりに囲まれて、体を拭いてもらってブラッシングしてもらって、里沙ちゃんたらどこで覚えて来たのかロンにマッサージまでしてあげるものだから、ロンたっらウットリ気持ちよさそうな目をしていて、まるでエステサロン。んっ?男の子が若くて綺麗な女の子に奉仕してもらっているからエステよりもチョットいけないサロンかも……。

 ロンのブラッシング中そんなクダラナイことを考えていたけれど、ロンをマッサージする里沙ちゃんの細くて長い指を見ていたら、確かに里沙ちゃんは文句を言いながらでも瑞希先輩に連れられて音楽を聴いたり練習したりを繰り返すうち、短期間で凄く上達していると思う。

 特にキーの押さえ方が旨くなったとか指使いが早くなったとかではなく、基本的な部分。

 つまり音楽が好き。

 自分の音が好き。

 自分の音楽で人が喜んでくれるのが好き。

 テクニックじゃなくて、小さな子供がラッパを鳴らすとお母さんが喜び、その顔が見たくて男の子がまたラッパを吹く。

 そんな音楽にとって最も根本的で重要なこと。

 私も、もう忘れかけてしまっていたことを里沙ちゃんは今、自然に学んでいるのだ。


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