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木管大戦争②

 里沙ちゃんと練習を終えてロンとマリーを連れて河原を散歩した。

 ふたりは本当に仲が良くて見ていて惚れ惚れする。(そのあと少しヤケるけど……)

 ロンがしきりにマリーの首にちょっかいを出していて、首輪が痛むといけないので止めるように注意していたけど言うことを聞かなくてとうとう噛んでしまった。

「ロン!駄目じゃない」

 少しきつめに注意して首輪が傷んでいないか確かめた。

 軽く咥えた程度なのか首輪には傷がついていなかったけど、何か首輪の裏側に張り付けてあるものが取れそうになっていることに気が付いて見てみる。

 迷子になった時の連絡先かなと思ってみたけれど、それはメモだった。

 見ていいものか、いけないのか迷っているとマリーが急に首を振ったので小さく折りたたまれたメモは首輪から外れて地面に落ちた。

 拾おうと手を伸ばしたとき、メモに書いてある名前を見て驚いた。

『親愛なるT,Aさま』

 万が一首輪から外れて他人の目に触れた場合を考えて宛名がイニシャルになっているけれど、これは確かに瑞希先輩が私宛に書いた手紙。

『親愛なるT,Aさま。Rさんから折角練習に誘っていただいたのに行けなくて御免なさい。自分からこれからも変わらぬお付き合いを頼みながら、やはり私が復帰する条件として貴女に要求した内容を考えると、どう考えても負い目があり気が引けてしまって行けませんでした。あの後、何度も違う選択肢はなかったか何度も考えましたが、私の頭では他に思いつく答えはありませんでした。練習頑張ってくださいと私が言うのは変だと思いますが、兎に角練習だけは欠かさないようお願いします。辛い思いをさせてしまい申し訳ありませんが、いつか理由を話せる日が来るようになれば良いな。我儘なお願いですが、そのときはまた以前のように変わりないお付き合いをさせて頂ければ幸いです。』

 手紙の内容は以上だった。

 横で一緒に読んでいた里沙ちゃんが「ちっとも分からない」とボヤいていたけれど、書きたい内容が書けないのだと思った。

 私は直ぐに鞄からシャーペンを取り出すと、小さな手紙の文末にある小さな余白に書き足した。

『親愛なるM,Mさま。今日Rちゃんと一緒に練習していて、音がRちゃんの音に変わったことに驚きました。私も負けないように練習頑張ります。マリーとロンは今日もいっぱいデートを楽しんでいて見ていて羨ましかったよ。また一緒に練習できる日を楽しみに待っています。byT,A』

 隣で見ていた里沙ちゃんが私の書く文字を見ながら言った。

「あ~!やっぱり千春の中では未だ私の事“ちゃん”付けで呼んでいるんだ」

 急に場の空気が春の穏やかで暖かい雰囲気に包まれて明るくなった。

 私は書いた手紙をマリーの首輪のもとの位置に戻して「瑞希先輩に届けてね!」とマリーの頭を撫でると、それを横で見ていたロンが不満そうに吠えたので「手紙を教えてくれて有難う」とロンの頭も撫でてあげた。

 ロンは納得したのか、得意そうに胸を張っていた。


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