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河原の練習場⑪

 短い間だったけれど、私が未だ吹奏楽部に居た頃に鶴岡部長が木管の練習を見に来ない事を不思議に思っていた。

 山下先輩の印象は木管グループのリーダーで格好良くて後輩には余り……いや、殆ど絡んでこないと言った印象しか残っていない。

 考えすぎかも知れないけれど、曲がボレロだと分かった時からソロパートは自分がやると決めていたのだと思う。でないと最初から一年生に副旋律の楽譜だけしか渡さないなんてあり得ない。

 最上級生だし実力もあるのだから、それはごく当たり前の事かも知れない。

 だけど……だけど鶴岡部長の求めているのは年功序列の思い出作りのためのものではない。

 全国高等学校吹奏楽コンクール本大会に勝ち上がる事。

 県代表になる事。

 そして、全国制覇!

 生意気だけど、年功序列などと言った甘いものは通用しない。

 だから、瑞希先輩のフルートの音に拘った。

 しかし……その瑞希先輩はどうしたのだろう。

 鶴岡部長の求めているフルート奏者が瑞希先輩であることは分かったけれど、特別扱いもなく、しかも木管グループに顔も出さないなんて何か訳があるに違いない。

「ねぇ里沙。副旋律の楽譜って一年生全員に配られているの?主旋律の楽譜をもらった子は居るの?」

 いくら外交的な里沙ちゃんでも誰がどの楽譜をもらっているかなんて知らないかもしれないと思いながらも聞いてみると、答えは直ぐに帰ってきた。

「Aグループだけが主旋律で、その他は全員副旋律の楽譜だよ」

「その他は全員ってBグループの三年生も?」

「そうだよ」

「……」

「千春は、こんな話好きじゃないから今まで言わなかったけれど、この際だから正直に言うけど」

 そう言った里沙ちゃんの顔が急に険しくなった。


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