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河原の練習場⑦

 楽譜の説明が終わると、江角君は肩に鞄を掛けて立ち上がった。

 あんまり話はしていないけれど未だ何か足りないことが有りそうな江角君と、聞きたいことを聞けていない私の目が合った。

 お互いに他人の事に口を出すタイプではないから、どう言えば良いのか、どう聞いたらいいのか、分からない。

「まあ、そういうこと」

 学校の様子か、楽譜の説明か、それとも今私が思っていた事への返事なのか分からないけれど、そのどれにも当てはまる言葉を投げかけた江角君は珍しく照れた顔を見せて玄関から出て行く。

 閉まったドアの向こうから、ガチャンと自転車のスタンドが上がる音がして、暫く経ってペダルを踏む音が聞こえ、そして遠くに消えた。

 江角君が帰った後ロンと散歩に出ていると、途中で里沙ちゃんから電話が入ってきて 私はロンと一緒に、いつものベンチに腰掛けて話をした。

 里沙ちゃんは未だ瑞希先輩に対して怒っていたけれど、わたしはその話しを聞いて瑞希先輩が吹奏楽部に戻ってきてから変わったことを訪ねてみると、里沙ちゃんは少し戸惑ってから、面白味が欠けてきた。と話した。

「面白味!?」

 何のことだか、さっぱり分からなかったので詳しく聞くと、それまでは初心者担当の三年生が簡単な楽譜を何枚か配ってくれ里沙ちゃんたちは自由に練習していたらしい。

 そして瑞希先輩が入ってからは、仲良く練習していた友達から離されて一人ずつ少し離れて練習させられる時間が増えたり、練習をサボって近くの大学の吹奏楽部の見学に行ったりするものだから三年生のリーダー格の女子たちから睨まれている。

 里沙ちゃんは、瑞希先輩には元々吹奏楽部に復帰する気持ちはサラサラなくて、一旦自分をクビにした復讐のために吹奏楽部内部の人間関係をグチャグチャにするのが目的なのではないだろうかと勘繰っていた。

「まさか……」

 瑞希先輩が、そんなことを考える人には思えない。

 屹度何か訳があるに違いない。

 里沙ちゃんに土曜日の夕方、河原で練習をする約束をして通話を終えた。

 通話を終えて直ぐに電話帳で瑞希先輩のアドレスを開いたけれど、結局メールも電話も出来なかった。里沙ちゃんの態度が今の状態だと話が余計悪い方向に進みそうだったから。


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