河原の練習場⑥
瑞希先輩のことや、最近怒っている里沙ちゃんのことを江角君に聞いてみようと思ったけれど、自分勝手に辞めた人間が吹奏楽部内の様子を面白半分で知りたがっていると勘違いされそうなので、俯いている江角君を見つめたまま口に出さないでいた。
横で伏せていたロンが、そんな私の顔をズット見上げていて、顔を譜面に落としたまま楽譜の説明を始めていた江角君がロンに気が付いて顔を上げ、今度は私が譜面に顔を落す。
「金管と木管は練習場所が違うから、詳しくは知らないけれど……」
またしても私の考えている事が筒抜けになってしまう!……。
「なんか……大変みたいだよ」
『大変!?』
「うん……」
私が心の中で言った言葉に江角君が返事を返し、そして教えてくれた。
私が居たときの木管は、大きく三つのグループに分けられて練習していた。
簡単に言うと上、中、初心者、上級者グループは楽器パートごとに一人か二人ずつ選抜されて練習している。その下に中級者グループがいて、私は入部早々にそこで練習をさせてもらっていた。そして初心者は里沙ちゃんが入っていて、ほとんどの一年生は先ず初心者グループから始める。
人数も、初心者が一番多くて、中、上と人数が少なくなっていく。
復帰した瑞希先輩が入ったのは中級グループ。
あれだけの演奏ができるのに何故中級なのだろうと疑問に思ったけれど、それは復帰後間もないからなのかと思った。
そして驚いたのは瑞希先輩が、その中級練習をサボってばかりいるという話。
瑞希先輩は中級練習には殆ど参加しないで初級グループの面倒ばかり見ているらしい。
話を聞いていて、おとなし目に見えてお姉さんタイプの瑞希先輩なら似合うだろうなと思った反面、江角君の言う“大変”と、どう繋がるのだろうと疑問に思った。





