表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
168/820

河原の練習場③

 放課後を告げるチャイムが鳴り里沙ちゃんと江角君を部活に送り出し、私は一目散に駅へと向かう。


 最初は部活のない放課後が嫌で堪らなかったけれど、今は違う。


 家に帰り河原に行って早く彼のために演奏してあげたい。



 そう。


彼の名はロン。


最初は私と河原まで散歩ができることが嬉しくて着いて来るのだと思っていたけど、何日か一緒に行くようになって漸く気が付いた。ロンが私の練習を楽しみにしてくれている事。


前から“草笛”を演奏するとき、きちんと演奏する私のほうを真直ぐ見てくれているので『あー、この曲好きなんだろうな』って、思っていたけれど、ここに来るようになってロンは伏せをしたまま確りと私を見ている。


面白いのは曲への反応で“草笛”の時は嬉しそうに目を見開いて聞いているのに“アヴェ・マリア”を演奏しているときはトロンとした目をしていて、曲が終わった後も私達人間がコンサートの後、暫く余韻に浸っているようにロンも暫くは虚ろな目から覚めない。


人は音楽を楽しむと言うのは昔から数々の名曲が残されていることから良く分かるけれど、犬が音楽を楽しんでいる事を知るとロンに、もっともっと色々な音楽を聞かせてあげたいと思う。


たった一人のファンが犬のロンだけど、だからこそ私は嬉しくて、ロンに聞いてもらうために沢山曲を覚えて、そしてどの曲も綺麗に感情を込めて演奏したいと思い、練習に力が入る。



それはまるで学校の吹奏楽部で練習するよりも大切な時間に思えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ