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河原の練習場②

「じゃあ行ってくるね!」

放課後、里沙ちゃんが部活に行く時に明るく声を掛けてくれた。

「じゃあな!鮎沢」

 そのあと、江角君までも。

 私は声を掛けてくれた二人に「行ってらっしゃい。頑張ってね!」と、努めて明るい笑顔で送り出す。

寂しくないなんて言えば嘘になる。

 だけど、いま私にできるのはこれくらいが精一杯。

二人を送り出した後は下駄箱まで駆けて行き、そのままの歩調で校門を出て駅に向かう。周りの景色も、音も感じない。

 ただ、風だけを感じながら駆ける。


 駅に着くと、人々の騒めきが私を包み込む。


 構内のアナウンスと電車の音。


 到着と出発を伝える音。


 電車に乗ると線路の継ぎ目を踏む音が規則的にリズムを取る。


 電車を降りると、階段を踏むステップがリズムを奏でている事に気が付く。


 どう逃げようとも、結局私は音楽が好きなのだ。

 家に帰ると、お出迎えしてくれたロンを連れて河原まで走る。

 勿論、肩にはオーボエを入れたケースがぶら下げて。

 学校から駅に向かう時とは違う風を感じながら駆けて行く。

 傾いた太陽が私の頬を熱くする。

 ロンと違うステップのハーモニーを楽しみながら、あっと言う間にいつもの河原に着いて、ケースからオーボエを取り出す。

 黒色の本体に、まるで飾りのように装飾されたように見える銀色のキイが日の光を受けてキラキラと宝石のように光り輝く。

 細いリードに、思いっきり圧力をかけた空気を少しずつ送り込んでいくと私の好きな高く澄んだ調べが奏でられる。

 今日の気分はモーツァルトのオーボエ協奏曲ハ長調K314!


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