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Uターン⑥

「これが私の条件です」

 強く頬を打たれたような衝撃が心の中を走った。

 瑞希先輩には正直戻って来て欲しいと思っていた。

 これからも仲良く一緒に練習したいと……。

 それなのに瑞希先輩が吹奏楽部に復帰する条件が私の退部だなんて。

 いつの間にかロンが私の膝元に来ていた。

 ロンは瑞希先輩に吠えたので、私が止めた。

 マリーもロンの横にいて困ったようにしてレモンティーを飲み終わって席を立とうとしている瑞希先輩を見上げている。

「ごめんなさい千春さん。そう言うことになるから、私を鶴岡部長に推薦しないで頂戴。ただし、鶴岡部長のお目当てのフルート奏者が私でない場合は、今の言葉は忘れてこれまで通りお付き合いしてください。嫌な事を言ってごめんなさい」

 瑞希先輩を見上げると、その目は今にも涙が零れそうなくらい濡れていた。

「本当に、ごめんなさい」

 瑞希先輩は二度謝って、マリーを連れてレジに向かう。

 マリーは何度も私とロンを振り返って嫌々着いて行く。

 他のお客さんの注文を運んでいた里沙ちゃんが立ち止まってポカンとした表情で瑞希先輩がレジを済ませてお店から出て行くのを見ていた。

 瑞希先輩が出て行くと慌てて里沙ちゃんが飛んできて

「どうしたの!」って聞いてきた。

 私は、思いっきり涙を我慢して

「急用ができたって」

 と、里沙ちゃんに顔を見られないようにロンを見るふりをして嘘をついた。

「そう……」里沙ちゃんはそう言ってから「エプロン返してくるね!」と明るく言ってお店の奥に引っ込んだ。

 気が付くと兄が見ていた。

 いくら隠そうとしても兄にも、屹度里沙ちゃんにもお見通しなのだ。

 どんなに上手に嘘をついても、私は嘘をつけるような人間じゃない。

 入り口が開く音がして江角君が入ってきた。


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