花火の夜に①
夏休み最後の日曜日には毎年この街の花火大会が催され、今年は中学の仲良しグループで見に行くことになった。
里沙ちゃんが迎えに来てくれると言うので待っていると、白い生地に金魚の模様をあしらった少し子供っぽい浴衣に、髪を綺麗にまとめた色っぽい大人の姿をした里沙ちゃんが来て、パァっと明るくなった玄関にロンも私も驚いて見とれていた。
「ロンも一緒に連れて行こうよ」
里沙ちゃんはロンも誘ってくれ、その言葉が分かったのかロンもおお喜び。
「わぁっ!ロンったら、言葉が分かるのね!」
里沙ちゃんもロンの反応に大喜びだけど……やっぱりロンは言葉は分かっていない。
だって今日はロンの嫌いな花火の『ドカン!』と言う爆発音が連発するのに、その真っただ中に行くのよ。
ロンの嫌いな物ベスト3
①かみなり
②花火の音
③ミニチュアダックスフンド
紫のアジサイ模様の浴衣に着替えた私は、人込みだから無理よって里沙ちゃんに言うと、里沙ちゃんはガッカリしていた。
私たちが家を出ようとすると、ロンは珍しく私たちに向かって吠えた。
その言葉は「いってらっしゃい」ではなくて「待って!僕も連れて行って!」だと言うことは分かっていたけど無視しようとした。
隣にいた里沙ちゃんが「ほら、連れて行けって言っているよ」と、私じゃなくてもロンの気持ちが伝わっている。
仕方なしに引き返してロンも連れて行くことになった。





