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Uターン④

 練習が終わって、帰りに皆で茂山さんのお店に寄る。

 自転車で来ていた江角君と伊藤君は私達より少し遅れてくる。

 お店に着いたら瑞希先輩に吹奏楽部へ復帰してもらうように言おうと思っていた。

 あらかじめ里沙ちゃんには、そのことを伝えていて先輩と二人っきりにして欲しいと頼んでいたので、お店に着くと里沙ちゃんは直ぐに茂山さんと厨房のお手伝いをするのに奥に入って行った。

 兄も何か察してくれたのかドッグランでロンとマリーのお世話をしている。

 最初は瑞希先輩も私もドッグランで仲良く遊ぶ二人を見ていた。

 心なしかロンは私を気にして時々視線を私に向けていた。

 エプロンをした里沙ちゃんが注文を取りに来て、瑞希先輩から可愛いと言われていたけど、私は色っぽいと感じた。

 先輩がレモンティー、私はミルクティーを頼んだ。

 BGMや食器の音、話し声に犬の声……静寂とは程遠い店内なのに、私には壁に掛けてある時計の秒針の音だけが強く聞こえていた。

 お水のコップに入れられた大きめの氷が解けて回転してカランと音を立てて、また止まった。

 コップの外側は未だ春だと言うのに汗を掻いているように水球が付いていた。

「瑞希先輩、吹奏楽部に帰って来てはくれませんか」

 私は漸く少しかすれる声で切り出した。

「ありがとう。でも私は実質的には、追い出された部員なのよ……」

 先輩は暖かく包み込むように返事をしてくれ、脈は有ると感じた。

 今日、先輩のフルートの音色を聴いていて感じたことを素直に伝えると恥ずかしそうに微笑んでくれた。

「先輩のフルートは感情に満ち溢れ、絶対に我が青葉台吹奏楽部に必要だと感じました。それに」

 次の言葉が最後の一言になると確信してしまい、自然に息を継いでしまった。

「それに?」

 瑞希先輩が先の言葉を促す。

「それに、鶴岡部長もフルート奏者を探しています!」


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