Uターン③
練習が終わって楽器を片付けたあと、ロンが勢いよく走って来て私に飛びついてきた。
ロンは私が楽器を持っているときは絶対に飛びついてこないので、こうして楽器をしまうまで待ってくれている。
音楽が好きなのか、それとも私の大切な物や時間をチャンと分かってくれているのだと思う。
立っていた私の胸まで前足を掛けて真直ぐな目で私を見てくる。
もう、こうされると可愛くて仕方がない。
私は直ぐに腰を低くしてロンに抱きついてあげる。
「いよっ!おふたりさん!いつも熱いねぇ~」
里沙ちゃんが茶化してきたけどロンが放れようとしないので、私もそのままロンを抱いて撫で続けていた。
漸くロンが力を抜いて顔を下げてきたとき、私の正面でジッと私を見ている目と合った。
ロンの目は今まであんなに燥いでいたのに、その目は何か訴えかけているように真剣に見えた。
『なに?なにが言いたいの?』
私は心の中でロンに聞いたけど、ロンは何も答えてはくれずに、同じ目をして私を見つめていた。
急にマリーがロンに体当たりを仕掛けてきてロンの目は元に戻り、ヤンチャ姫の相手をすることになり私も低くしていた腰を上げ、立ち上がって二人がじゃれ合うのを皆と同じように笑って見ていた。
でも、心の中ではさっきのロンの目が語ってきたことが何なのかズット気になったままだった。





