Uターン②
最後は全員の楽器が堰を切ったように自由に音を奏でて締めくくった。
全部の演奏が終わり額の汗を拭ってロンのほうを見ようとしたとき、はじめて知らない人たちに囲まれていることに気が付いた。
河原を散歩していた老夫婦やカップル、ジョギングしていた人たちにサイクリングをしていた人たち、子供と河原で遊んでいた若い夫婦にハイキングに来ていたグループ。
それから土手の上にも散歩やサイクリストたちが大勢足を止めて聞いてくれていたらしく拍手を送ってくれていて驚いた。
「ふぅ~、さすがにビックリしたね!」
急に集まった聴衆に挨拶を済ませ、もとの閑散とした河原に戻ったころ里沙ちゃんが口を開き、それをきっかけに皆も漸く話ができる状態に戻った。
「次々に集まってくるから焦ったよね!」
瑞希先輩がそう言った。
私は周りなんて見る余裕がなかったのに、瑞希先輩はチャンと見えていたのだと、里沙ちゃんと楽しそうに話をしているその横顔を少し恨めしい気持ちで覗き見ていた。
「それにしても俺様の独奏はどうなった?」
そう言えば伊藤君のトランペットの独奏だけなかった。
江角君が
「お前には独奏は合わない」
とそっけなく返事して返すと伊藤君は
「じゃあ、俺に合うのってなんだ?」
と聞いてきた。
「伊藤に会うの……」
江角君が考えている間、私も考えてみた。伊藤君に似合いそうなもの……直ぐに浮かんだのは昔ドラマか映画で見た騎兵隊のラッパ係り。
ラッパの合図で全員が一斉に馬を走らせて突撃するシーン。
もちろんラッパ手は列の先頭に立って猛々しくラッパを吹きならす。
でもなんだか伊藤君が列の先頭に立つと、ひとりだけ明後日の方向に走ってしまいそう。
私が。そう考えている間に江角君も答えを見つけたみたいで
「おまえに合うのは、みんなと一緒に演奏していて、少しだけリーダーシップをとるような感じかな」
「それって、どんな感じだよ。具体的に曲で言ってくれ」
伊藤君が聞くと江角君は答えを用意していたように直ぐに応えた
「ムソルグスキーの組曲、展覧会の絵」
あっ!なるほど……と思った。
「展覧会の絵、か……」
伊藤君は、それをどう思ったのか分からなかったけれど神妙な面持ちで楽曲名を呟いていた。





