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ただいま募集中⑤

 最初に練習したのは今部活で練習している「風之舞」

 これは二千四年の吹奏楽コンクール課題曲で、瑞希先輩も一年生の時に練習したことがあると言っていたので教えてもらいながら練習した。

 瑞希先輩は未だフルートを始めて一年くらいなのに物凄く上手なので驚いて聞くと、実は小学校の時に習っていて児童楽団にも入っていたのだと教えてくれた。

「じゃあ何故中学ではホルンに変えたの?」

 里沙ちゃんが興味津々といった具合に身を乗り出して聞くと、瑞希先輩は少し顔を赤くして

「好きな人がホルンだったから……」と教えてくれた。

「っで、その人は今……?」

 催促するように里沙ちゃんが聞くと、遠く川向こうにある街を見ながら「遠くに行っちゃった……」と瑞希先輩は答えた。

「遠くって、ど。」

 聞こうとしていた里沙ちゃんには悪いけれど、先輩の目を見て何となく気が付いてしまった私は、その問いかけを掻き消すように「風笛」の演奏を始めた。

 すると瑞希先輩も続いて演奏をはじめ、そのあとから里沙ちゃんも続いて、即席の木管三重奏が出来上がり、いつのまにか散歩に出ていたロンがマリーと兄と茂山さんを連れて戻って来て、私を真直ぐ見ているロンの目に応えるように私もロンの目を真直ぐに見ながら演奏した。

 草笛の即席三重奏が無事に終わるとロンが私の傍まで来て甘えてくれて、それを見ていた皆がロンと私がまるで恋人同士みたいに見えると囃し立てる。

 皆に言われて、顔を赤らめて困った表情を作りながらも内心嬉しく思っていた。

 風笛のあと、茂山さんが、私達三人の好きな曲とか、得意な曲が聞きたいとリクエストしてきて、私達三人はそれぞれ顔を見合わせた。

 私と里沙ちゃんは兄や茂山さんも知っているから平気だけど、瑞希先輩は茂山さんのお店には行っているものの、実質は今日が初対面だし私の兄とは当然見たことも話したこともない。

 この場合、茂山さんの申し出を断るか、演奏するとしたら先ず私か里沙ちゃんが始めなければと考えていたが、大好きな風笛を演奏し終わったばかりだったので咄嗟に楽譜が思い出せなかった。

 当然、まだやりはじめの里沙ちゃんはとっさに演奏できるまではいかない。

 私が、焦って考えている最中に突然瑞希先輩のフルートの調べが始まった。


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