ただいま募集中②
検診の帰り道にお母さんと茂山さんの喫茶店に入った。
店内に入った途端、ロンは強くリードを引き私の顔を見上げる。
放して欲しいときに、よくとる仕草。
『なんだろう?』と思って店内を見渡してみるとドッグランを走っているマリーが目に留まった。
マリーは瑞希先輩と遊んでいて、まだロンには気が付いていない。
ロンを放してビックリさせようかとも思ったが、万が一ロンが私の考えている事と全然違う行動に出た場合パニックになりそうなので傍まで連れて行く。
瑞希先輩とマリーは直ぐに私たちに気が付いてくれて、マリーなんかは一目散で駆けてきてロンに体当たり。
リードを放すとロンも、首でマリーを押したり前足で倒そうとしたり兎に角この二人の遊び方は激しい。
瑞希先輩はテーブル席からこっちを眺めているお母さんに気が付いて、お互い会釈を交わした後
「買い物の帰り?」と聞いた。
私は首を横に振り、ロンの定期健診に行ってきたと答えると瑞希先輩は
「大丈夫だった?」
と、また聞いてきたので、最初はドキドキしたけれど噂ほどキツイ人じゃなくて安心したと言うと、大きな眼を一瞬だけ更に大きく開けて驚いた表情を見せたあと大声で笑いだした。
「えっ!なに?わ、わたし何かおかしなこと言った??」
「言ったわよぉ!」
瑞希先輩は涙を拭きながら
「ロンの検診結果を聞いているのに、鶴岡部長に会いに行ってきたことなんて話すから」
と、また笑い出した。
「あ、会いに行ってなんていません。ロンのリードが放れて、ロンが母屋のほうに走って、器用に玄関を開けて・それから、中で吠えて……」
細かく説明して勘違いだと説明しようとしていたら、瑞希先輩は分かっているからもういいよと笑って聞いてくれていた。
「それにしても、千春。顔が赤いよ」
そう言われて頬に手を当てると、少し火照った頬から更に高い熱が噴き出してくるのが分かった。





