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ただいま募集中①

「フルートの演奏者を探している」

 言っている意味が分からなかった。

 フルートと言えば、私たちの吹奏楽部ではクラリネットに次いで人数が多い。

 しかも正規メンバーに選ばれる数はクラリネットに対して約半分しか選ばれないので、部長の立場から言うと、誰を入れるかより誰を落すかが悩みの種になりそうだと思った。

……それなのに、部長はフルート奏者を探している。

正直バカにしていると思った。

今いるフルート担当者に失礼だと思い「どうしてですか」と冷たい声を出してしまった。

「ごめん。鮎沢さんが怒るのはよく分かるけど、ひとりだけどうしても足りないんだ」

「ひとりだけ?」

「そう。我武者羅で、いざというときに度胸のある鮎沢さんのような人が欲しい」

 カアーっと顔が真っ赤になるのが分かった。

 だって…….

だってそうでしょ。

意味が違うのは分かっているけれど、私のような人が欲しい。

なんて急に言われたら、心の準備も出来ないままハートが沸騰してしまう。

 真っ赤になった私の顔に驚いた鶴岡部長が、どうフォローすればいいのか戸惑ってしまい、そのことがまた私を恥ずかしくさせる。

 堂々巡りに陥って、正直泣きたいほど恥ずかしいし実際泣きそう。

 気まずい雰囲気の中、急にロンが走り出そうとしたものだから、引っ張られてバランスを崩し前のめりになって鶴岡部長の胸に手をついてしまう。

鶴岡部長も私が倒れないように優しく肩を支えてくれた。

「あっ」

「すっ、すみません」

 私は直ぐに謝って、部長の胸から離れるとロンが囃し立てるようにワンワンと吠えた。

“イタヅラだ!”

「コラッ!ロン!」

 真っ赤な顔のままロンを睨むと、ロンは直ぐに庭に向かって走り始めた。

 私も直ぐに追いかけたけど、器用に私に捕まらないように逃げ回るロンに完全に遊ばれる格好になり、私もそれを楽しんでいた。

 途中から部長も一緒に加わり、なかなかロンは手ごわかったけど結局私たちに挟み撃ちにされてロンは降参した。


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