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いとぐち⑩

「正確には一年生でやめたんじゃなくて二年生の夏なんだ」

「二年生!?」

「そう。確かにやりたい事があったのは確かだけど、それまではやる自信がなくて諦めていたんだ。だけど、あるコンクールに行ったときに、それが出来ると確信した」

「そのコンクールって?」

「全国吹奏楽コンクール神奈川県予選」

 鶴岡先輩が二年生の時の県予選会なら、私たちが出た大会だ。

「そこで、緞帳が上がったときに一人の女の子が舞台の中央に立って演奏して、それを聞いた時に迷っていた心が、すっと溶けた」

 あの日、女子のソロから曲を始めたのは私たちの中学だけだった。

「そっ、それってもしかして……」

「そう。鮎沢千春さん。君だよ」

 私なんかが、なんで……。

「僕は、僕自身が楽器を演奏するよりも大きな可能性に賭けてみることに決めた。ただ、ひとつ付け加えておかなければいけないのは、鮎沢さんに掛けている訳じゃないということ。もちろんきっかけをくれたのは鮎沢さんだけどね」

 自分に重大な期待が掛かっていないことにホッとするとともに、ホンの少しだけガッカリしてしまった。

 鶴岡先輩の話から、独奏パートの多い曲をやりたいのかなと思った。

 それなら楽器のメンテナンスに気を使う意識付けも大切だろう。

 私が、そんなことを考えていて鶴岡部長の視線に気が付いて目を上げると、満足そうに微笑んでいる優しい目とぶつかって慌てて目を伏せた。

『見透かされた……』

 そう思うと、急に耳が熱くなった。

「これでいい?」

 鶴岡部長の声に

「はい」と答える。

 次は部長の番だ。


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