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いとぐち⑧

 庭の向こうは母屋になっていて、病院側にある玄関は引き戸になっていた。

 ロンは器用にその戸をあっと言う間に開けて中に入ってしまい、慌てて追いかけた。

「待て!」

 いくら小さい頃、ここで飼われていたといっても今は違うのだから院長先生から部屋を見ていいと言われても勝手に入ってしまうのはいけないと思う。

 ロンを追いかけて私まで一緒に他人の家に上がってしまうなんて、なおさらだ。

 ロンは家の玄関で止まってお座りをした。

 ヤンチャだけど、指示にキチンと対応する賢い子。

 だけど、玄関にお座りしたロンは家の奥へ向かってワンワン吠えだした。

 人差し指を口に当てて「シッ!」と静かにするように合図しても、私のほうに向いていないのだから従う訳もない。

「失礼します」と、ことわって恐る恐る玄関に入り、やっとロンを捕まえたと思ったとき正面の階段を降りてくる足音が聞こえた。

「すみません。診察にきていて、うっかりリードを外してしまって……」

「やあ。ロン久しぶり!それに鮎沢さんも」

 てっきり奥さんかと思っていたら、目の前に現れたのは鶴岡部長だった。

「ど、どうして部長が……」

 部長の親がしている動物病院に来ていて、しかも母屋の玄関で騒いでいれば自然と家の人が不審に思って出てくるはずで、それが部長だとしてもあたりまえなのに何故か聞いてしまった。

「居ないと思っていた?」

「あ……いえ……」と誤魔化したけど部長に言われて、部長が出てきたときに自分が驚いた理由が分かる。

 そう。

 居ないと思っていた。

 ……それにしても里沙ちゃんや江角君、それに今の部長と言い、なんで私の思っていることが分かってしまうのだろう?

「それは、顔に書いてあるから」


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