表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/820

いとぐち②

 ニュージーランドに居る美樹さんによると、犬の賢さは、犬が主人を思う気持ちから犬本来の能力を超える特別なパワーがあるのだと言う説と、飼い主が自分の考えを犬の表情に当てはめて導き出し、あたかも犬によって答えを導かれたように感じ取ってしまう説とがあるのだと言う。

 一概に、どちらかということは決められないけれど、おそらくこの両方の作用により犬は人間の友達として特別な役割を担うことができている。

 もちろんそこには犬と人間の愛情が大きく左右しているのは間違いない。

 つまりお互いの愛情が深いほど、お互いに特別な“力”を得ることができる。

 ロンは賢いけれど、それは犬全体の中で特別賢いというわけではないと思う。

 私だって犬と話ができる能力を持っている訳ではない。

 ただ、お互いが好きだから、お互いの小さな行動や表情、雰囲気まで見逃さないからこんなにも分かり合えるのだと思う。

 ロンが私に伝えた“おもいやり”や“おもてなし”の心は、私の心の隅に合ったのだと思う。

 それをロンは引き出してくれた。

 星空を見つめながら小さな声で風笛のメロディーを口ずさみながら、音楽って何だろうと思う。

 音楽は、癒し?

 芸術?

 ……音楽に必要なことは、正確さ?綺麗さ?

 もしも今この夜中に、世界の有名な演奏家を集めて素晴らしい曲を演奏したとして、この街の人たちはそれをどう受け止めるだろう。

 宿題の手を休めて聴き入るだろうか?

 目を覚まして布団の上で感動に浸るだろうか?

 私は違うと思う。今この夜空の下に必要なのは“静寂”。

 そしてコンクールに必要なのは鶴岡部長の言う通り“正確な音”

 しかし吹奏楽部の部活動にとって最も必要な物は、はたしてその“正確な音”なのだろうか?

 私は違うと思う。

 吹奏楽部にとって最も必要な物は音でもリズムでもなくて、音を楽しむための“おもいやり”のような気がした。

 それは演奏者が音を楽しむためでもあり、聞き手が音を楽しむためのもの。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ