高校デビュー⑨
「えっ!?」
「だって私も青葉台だから。学年は一つ上だけど」
年上だとは思っていたけれど、たった一つ上だとは思ってもみなかった。
それに同じ高校に通っていることも。
スレンダーな百瀬さんの体系から文科系の部活を想像して、もしかしたら吹奏楽部の先輩だったら好いなと思って聞いてみた。
「私、吹奏楽部に入ったんですけど、百瀬さんは何か部活に入っているんですか?」
「部活、していないんだ……」
急に百瀬さんの表情からスーッと暖かい光が消えて、隙間風の吹きこむようなどこか冷たい明るさに代わったような気がした。
「ごっ、御免なさい。自分が入ったからって、みんな入っている訳じゃないですものね」
なんか、変なことを言ってしまったと思った。
「ううん。実は私も部活入っていたんだ。それも、鮎沢さんと同じ吹奏楽部に」
「なんの楽器をされていたんですが」
「フルートよ。鮎沢さんは?」
「私はオーボエです。あっ、それに一緒に来ている里沙はやり始めたばかりだけどサックスです」
「なんか、木管三重奏ができそうね!」
話は音楽の事で盛り上がり、お互いを瑞希先輩、千春と呼ぶことになった。
「ねぇ、瑞希先輩はそんなに音楽が好きなのに、何で吹奏楽部辞めちゃったんですか?」
聞いてはいけないと思っていたけど、聞きたかった。話をしている中で、屹度瑞希先輩は辞めたことを後悔していると思った。もし……もしも、こんな私でも何か役に立つ事ができるのなら手伝ってあげたいと思った。
瑞希先輩は暫く黙った後、“逃げ出した”と言った。
「逃げ出した……?」
賢い子なのだろう、マリーは瑞希先輩の気持ちが落ち込んだのを悟ると、ロンと遊ぶのをやめて先輩のひざ元におとなしく座った。
瑞希先輩はマリーの体を撫でながら経緯を話してくれた。





