表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/820

高校デビュー④

 動物病院の息子さんは鶴岡祐介と名のった。

 いつも通っている病院なのに先生の苗字が鶴岡であることを初めて知り納得する。

 でも不思議なのは動物病院の名前は『スワン動物病院』で、これは英語で白鳥のことだから。

 鶴岡部長に入部にあたっての注意事項や活動時間などを教えてもらい手続きを終える。

 そのまま帰宅するか、見学するかは自由だったので私は見学することにして練習を見ていると珍しく江角君が近づいてきた。

「知り合い?」

 江角君の視線の先に居るのは、入部希望者にテキパキと対応するさっきの三年生の男子。

「うん。ロンを診てもらっている動物病院の息子さん」

「仲良いの?」

 いつもと違って、興味深そうに聞いてきたのを変に感じたけど。

 二回くらい顔を見ただけで話らしい話もしたことがなかったので、顔見知り程度だと答えると

「ふーん」

 と急に味気ないいつも調子に戻った。

『つまんないの……』

 何故か折角話し掛けてもらったのに、江角君がつまらなそうになったのは屹度私の受け応えのせい。

 それは分かっているけれど、もっとロンや里沙ちゃんといるときみたいに気軽に話ができたらいいのにと思う。

 そういえば、さっきから里沙ちゃんの姿が見えないけれど何処だろうと探していると、もう部活に溶け込んでいてサックス担当の人に手ほどきを受けていた。

『さすが里沙ちゃん!』

 暫くすると、入部手続きも終わったらしく鶴岡部長も練習に戻って来た。

『なんの楽器の担当なんだろう?』

 と思って注意して見ていたら、楽器を手にしないで中央の空いたスペースにポツンと置かれた譜面台の前に立つと指揮棒を手にした。

 鶴岡部長が指揮棒を手にした途端、それまで各々が練習のために出していた音がピタッと止まる。

 これって……。

「そう。鬼の鶴岡部長だよ」

 いつの間にか隣に来ていた江角君がポツンと言った。

『鬼?』

 優しそうな鶴岡先輩の顔と、江角君がその先輩の苗字の前に着けた一文字を頭の中で交互に見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ