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新しい朝⑩

 学校に着くと教室で、これから始まる入学式と、そのあとの予定をお母さんと一緒に聴いて、それから入学式の行われる体育館に移動した。

 お母さんとは一旦ここでお別れ。

 少し外で待機していると「新入生入場!」のアナウンスが聞こえ、同時に吹奏楽部の演奏が始まった。 体育館の外からでも十分に聞こえる演奏は迫力があり、実際に体育館に入って聞くと迫力は有るけど特別大きな音を出している感覚でもなく、中学生の頃は強い音を出すために強く演奏していたのが、ここでは強く演奏しなくても強い音が出せている“余裕”みたいなものが感じられる。そしてその余裕の中に感情も込められている。

 江角君の言った此処を選んだ理由

『ここに来れば分かる』ってこういうことなのかしら。

入場する際に、先輩や父兄、教職員、来賓の方々に拍手で迎えられる中、私はズット吹奏楽部の演奏に聴き入っていた。

 いろいろな人にお祝いの言葉を戴いて入学式が終わり、今度は退場する。

 ここでも皆から拍手で祝福され、吹奏楽部の演奏で送り出してもらう。

 入場のときは背中越しに音楽を聴いていて良く分からなかったけど、こうして退場するときに真正面に見上げると、吹奏楽部の演奏している場所もカッコイイ。

 私たちの中学が体育館二階席の端で演奏していたのに対して、この学校では体育館の二階席中央が丸く飛び出していて正にオーケストラのためのステージになっていた。

『すごい!』

 出口に向かって歩きながら、その二階席の前列で華のように演奏している自分の姿を思い描いていた。

 再び教室に戻り、明日からの予定や注意事項、一学期、そして一年の行事予定と注意事項などが生徒と父兄に伝えられ沢山のプリントと提出する用紙を貰った。

 途中で先生に呼び出しが入って教室から出て行ったとき、やっと少し余裕が出て教壇と黒板以外の場所に目を移すことができた。

 横を少しだけ向くと私の横並びの三列向こうの窓際に背の高い男子がいた。

 江角君だ。同じクラスなんだと、ボーっと考えていると後ろから肩を叩かれて振り向くと立っている里沙ちゃん。

「えっ!もしかして同じクラス?」

 私が驚いて聞くと

「もう!千春は、何度手を振っても気が付いてくれないんだからぁ~」

 と里沙ちゃんは苦笑いしながら言う。

「やったぁ~今年も一緒のクラスだね!」

「一緒に吹奏楽部頑張ろうね!」

 私たち二人が抱き合って喜んでいるとき、何故か窓際の席の江角君が私達を睨んだような気がして、私は夜寝るまでそのことがズット気になっていた。


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