新しい朝②
いつも朝の散歩は学校に行かなくてはいけないので、三十分くらいしかとれなかったけれど今日は時間制限のない散歩。
ロンの行きたいところをロンが飽きるまで一緒に行けるのだ。
なるべく車通りの少なくて自然の豊かな通りを選んで歩く。
ロンは男の子なのに意外に花が好きみたいで野辺に咲きはじめた小さな花の臭いを楽しんでいて、たまに頭をのぞかしたばかりの“つくし”に鼻先を近づけ過ぎて胞子を鼻に入れてくしゃみをしていた。
散歩中に他の犬がロンに気が付いて吠えたり、近づいてきてもロンは知らんぷり。
気が付いていないのか興味がないのか分からないけれど、あまりにも無防備すぎるので私が相手のワンちゃんを近づけさせないように飼い主さんに“おことわり”を言って近づきすぎないようにしてもらう。
相手の犬がどんな行動をとるか分からないし、ロンだってどんな反応をするか分からない。
犬のあごの力は強いので怒って噛んでしまったりすると酷い怪我を負うことになるので、これも飼い主が注意してあげなければいけない。
あんまり他の犬に興味がなさそうなロンを心配して、定期健診のときに獣医さんに相談したところ、ロン自分のことを家族と同じだと考えているのだと言っていました。
それは、どうも自分のことを人間と勘違いしているとかではなくて、人と犬という垣根を超えた‘家族“ということらしいのです。
はじめてそのことを聞いた時には、よく理解できなかった。
だって私たちは「犬」「猫」「鳥」「木」「男」「女」……と、なんでも分類に分けてしまうでしょ。
屹度ロンだってそうだと思っていたけれど、最近注意して見るとロンの場合
「好きか、嫌いか」
「興味があるか、興味がないか」
「ご飯の時間か、そうではないか
」みたいな単純で分かりやすく分類しているみたい。
三〇分かけて着いたのは、花火大会のときに行った河川敷の土手。
ロンと一緒に堤を登ると、吹く風が少し強く肌を摩って気持ち好い。
誰かが楽器の練習をしている音が聞こえてきて、私もオーボエを持ってくれば良かったと思った。





