表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/820

桜の季節に向けて⑧

 体育館を出て、教室に入るまで自力で歩くことも立つことも出来なかった。

 二人に支えられて教室の自分の席に座らせてもらう。

 私が椅子に腰かけると直ぐに江角君はいなくなったけど里沙ちゃんはズット私の傍に居てくれる。

「里沙。ゴメン、私、もう、大、丈夫、だ、から」

 里沙ちゃんだって悲しいのに決まっている。

 私がこんなんだから里沙ちゃんに迷惑が掛かっている。

 だから嗚咽を堪えながら口に出してみたものの、言葉は喉に詰まって旨く吐き出せなかった。

「いいよ。泣いている千春のお世話をしていると、改めて三年間過ごしてきた日々がこんなにも大切だったんだなぁ~って思えるし、お姉さんみたいな気分も味わえるし」

「お、ねえ、さ、ん?」

「だって、私、一人っ子だ、から……」

 里沙ちゃんもやっぱり無理していたのだろう、言葉が詰まって私の背中に抱きついて泣き出してしまった。

 私は向きを変えて席から腰を浮かせて、里沙ちゃんを抱きかかえるようにして今まで私が座っていた席に座らせ一緒に泣いた。

 最後のHRが終わる頃には里沙ちゃんも私もテンション低めだけど、普段に近い状態まで戻った。

 あとはクラスごとに運動場に待機している下級生たちに見送られて帰るだけ。

 今は、その準備と順番を待っている。

 卒業文集を眺めていた私の前に伊藤君が来た。

「鮎沢。ちょっといい?」

「ん?!」

 見上げたとき、もう伊藤君は教室を出て行くところだったので慌てて追いかけた。

 教室では何か勘違いしているクラスメートが「ヒューヒュー!」と茶化している。

 伊藤君は後ろも振り返らずに、スタスタと音楽室のほうに歩いて行く。

『なにか忘れ物なのかな?』

 漸く追いついた時、振り返った伊藤君の顔がいつになく真剣そうに見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ