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桜の季節に向けて④

 吹奏楽部には個人名のほかに、その人を紹介する際に使われるタイトル名が遊びで付け加えられることがある。

 例えば、部長の江角君は「クールな天才トロンボーン」

 陽気なムードメーカーの伊藤君は「トランペットの喜術師」

 真面目で大人しい福田さんは「ブレないファゴット」

 話好きな美緒は「目覚ましクラリネット」

 ドラムの甲本君は「クレイジー、リズム馬鹿」

 そして私は「オーボエの感動屋」

 誰がいつ付けたのか定かではないが、それぞれの特徴をよく捉えていると思う。

 私の場合は演奏が終わった時いつも涙が零れ落ちているから“感動屋”と付けられた。

 付けられた時は正直嫌だったけれど、今では懐かしい名前。

 練習中ミスの連続で気まずい雰囲気になったこともあったし、怒鳴り合いの喧嘩が起きたこともあった。

 それでも空中分解せずに最後はいつも一致団結して本番を迎えていた。

 最後のコンクールでは県代表は叶わなかったけど、私たちの代では初めて市の代表にも選ばれた。

 そして山の上のキャンプ場でのコンサートと、そのあとの星空のコンサート……。

 いつまでも一緒に演奏したかったのに、この春からは、別々の高校へと進む。

 卒業式典の前に、そんなことを思い出していたらいつの間にか瞼に溜まった涙が頬を伝っていた。

「おっ!感動屋の副部長がもう泣いているよ」

 涙を拭いているところを伊藤君に見られた。

「伊藤!お前デリカシー欠乏症!」

 江角君がフォローしてくれるけど、今日は我慢せずに正直に言いたいと思った。

「いいよ、本当に悲しいんだもん。皆とわ・か……」

 辛くなって途中で声が出なくなる。

 直ぐに里沙ちゃんが飛んできて背中をさすってくれた。

 正直に言おうとすれば悲しさが込み上げてきて、結局里沙ちゃんや他の人たちに迷惑をかけるだけになるから、結局、式が終わるまで我慢しようと決めた。


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